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オーバーホールだより~2~

CONNECTION REEL SERVICEの更新担当の中西です

 

【見えない精度が命を守る】

オーバーホールとは、単なる修理ではありません。
それは“機械や機器の内部をゼロに戻す”――言い換えれば、精密に再生するための最終工程です。

一方で、オーバーホールは分解・洗浄・調整・再組立という緻密な工程の連続であり、わずかな判断ミスや手順違反が重大な機能不良・事故・信頼喪失につながる仕事でもあります。

今回は、プロの現場で共有されている「オーバーホール専門業における注意点」を、工程別に深掘りしてご紹介します。


1. 【分解時の記録】“戻せない”を防ぐ管理力

分解はオーバーホールの第一歩。しかし、ここでの手順ミスが、「組み戻せない」大きなトラブルに直結します。

注意すべきポイント:

  • すべての部品配置を写真・図で記録

  • 分解順に沿ったトレイ分け・ラベル管理

  • 特殊な組立方向やばね圧に注意

  • ネジの長さ・径・締め順を細かく区別

「記憶ではなく記録」こそが職人の基本。


2. 【洗浄の精度】見えない汚れが性能を奪う

部品洗浄は「再生」の本質を支える作業。
金属粉・潤滑油カス・サビ・微細な粒子などが残れば、どんな精密調整も台無しになります。

注意点:

  • 洗浄液・超音波・ブラシの使い分け

  • プラスチック・ゴム・金属で薬剤を変える

  • 内部穴・軸受け・ネジ山の徹底洗浄

  • 洗浄後の自然乾燥・エアブロー管理

“目に見えない清掃”こそ、プロの実力差が表れます。


3. 【部品交換の判断力】「まだ使える」ではなく「交換すべき」

オーバーホールでは目立った破損がなくても、消耗部品は“迷わず交換”が原則です。

主な交換対象:

  • パッキン・シール材・Oリング

  • ベアリング・ブッシュ・スプリング

  • グリス・潤滑油・絶縁材

  • ネジ・ワッシャー・バネ座金

迷ったときは、「今変えずに後悔しないか?」で判断。
コストよりも信頼性を優先するのがオーバーホールの基本姿勢です。


4. 【組立精度】“規定トルク”と“感覚”のバランス

再組立ては「元通りに戻す」だけでは不十分。規定通りのトルク・隙間・潤滑量が求められます。

技術的注意点:

  • トルクレンチ使用と管理票の記録

  • グリス塗布量の適正化(少なすぎ・多すぎ厳禁)

  • 過締めによる変形や破損防止

  • 可動部の“遊び”と“渋さ”の調整力

手の感覚と数値管理の両立が、信頼性を支えます。


5. 【試運転と安全確認】見落とし1つで“命に関わる”

オーバーホール後の試運転では、動作音・温度上昇・振動・異常信号のすべてをチェックします。

試運転時の重要項目:

  • 無負荷・定常運転の両方を検証

  • 周囲に可燃物・工具がないことを確認

  • 安全装置・アラームが正常作動するか確認

  • 再点検チェックシートで“Wチェック”

**「最終確認こそ最大の責任」**という意識が、プロの証です。


オーバーホールは“見えない信頼”を組み立てる技術

オーバーホールは、「直す技術」ではなく、「預かった機械を“未来に耐え得る状態”に再構成する技術」。
分解から再構築まで、ひとつひとつの判断と手仕事の積み重ねが、ユーザーの安全・安心・満足につながります。

技術力・判断力・記録力・誠実さ――すべてが備わってこそ、“オーバーホール専門業のプロフェッショナル”です。