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月別アーカイブ: 2025年6月

オーバーホールだより~2~

CONNECTION REEL SERVICEの更新担当の中西です

 

【見えない精度が命を守る】

オーバーホールとは、単なる修理ではありません。
それは“機械や機器の内部をゼロに戻す”――言い換えれば、精密に再生するための最終工程です。

一方で、オーバーホールは分解・洗浄・調整・再組立という緻密な工程の連続であり、わずかな判断ミスや手順違反が重大な機能不良・事故・信頼喪失につながる仕事でもあります。

今回は、プロの現場で共有されている「オーバーホール専門業における注意点」を、工程別に深掘りしてご紹介します。


1. 【分解時の記録】“戻せない”を防ぐ管理力

分解はオーバーホールの第一歩。しかし、ここでの手順ミスが、「組み戻せない」大きなトラブルに直結します。

注意すべきポイント:

  • すべての部品配置を写真・図で記録

  • 分解順に沿ったトレイ分け・ラベル管理

  • 特殊な組立方向やばね圧に注意

  • ネジの長さ・径・締め順を細かく区別

「記憶ではなく記録」こそが職人の基本。


2. 【洗浄の精度】見えない汚れが性能を奪う

部品洗浄は「再生」の本質を支える作業。
金属粉・潤滑油カス・サビ・微細な粒子などが残れば、どんな精密調整も台無しになります。

注意点:

  • 洗浄液・超音波・ブラシの使い分け

  • プラスチック・ゴム・金属で薬剤を変える

  • 内部穴・軸受け・ネジ山の徹底洗浄

  • 洗浄後の自然乾燥・エアブロー管理

“目に見えない清掃”こそ、プロの実力差が表れます。


3. 【部品交換の判断力】「まだ使える」ではなく「交換すべき」

オーバーホールでは目立った破損がなくても、消耗部品は“迷わず交換”が原則です。

主な交換対象:

  • パッキン・シール材・Oリング

  • ベアリング・ブッシュ・スプリング

  • グリス・潤滑油・絶縁材

  • ネジ・ワッシャー・バネ座金

迷ったときは、「今変えずに後悔しないか?」で判断。
コストよりも信頼性を優先するのがオーバーホールの基本姿勢です。


4. 【組立精度】“規定トルク”と“感覚”のバランス

再組立ては「元通りに戻す」だけでは不十分。規定通りのトルク・隙間・潤滑量が求められます。

技術的注意点:

  • トルクレンチ使用と管理票の記録

  • グリス塗布量の適正化(少なすぎ・多すぎ厳禁)

  • 過締めによる変形や破損防止

  • 可動部の“遊び”と“渋さ”の調整力

手の感覚と数値管理の両立が、信頼性を支えます。


5. 【試運転と安全確認】見落とし1つで“命に関わる”

オーバーホール後の試運転では、動作音・温度上昇・振動・異常信号のすべてをチェックします。

試運転時の重要項目:

  • 無負荷・定常運転の両方を検証

  • 周囲に可燃物・工具がないことを確認

  • 安全装置・アラームが正常作動するか確認

  • 再点検チェックシートで“Wチェック”

**「最終確認こそ最大の責任」**という意識が、プロの証です。


オーバーホールは“見えない信頼”を組み立てる技術

オーバーホールは、「直す技術」ではなく、「預かった機械を“未来に耐え得る状態”に再構成する技術」。
分解から再構築まで、ひとつひとつの判断と手仕事の積み重ねが、ユーザーの安全・安心・満足につながります。

技術力・判断力・記録力・誠実さ――すべてが備わってこそ、“オーバーホール専門業のプロフェッショナル”です。

オーバーホールだより~1~

CONNECTION REEL SERVICEの更新担当の中西です

 

【蘇る精密機械】

「オーバーホール」という言葉をご存じですか?
時計、エンジン、ミシン、ポンプ、空調機器…
それぞれの分野で使われるこの言葉は、単なる修理ではなく、製品を“本来の状態に戻す”ための精密な作業を意味します。

今回は、オーバーホール修理業において「オーバーホールとは何か?」その本質をプロの視点から深く掘り下げてご紹介します。


1. オーバーホールとは?:分解・洗浄・交換・調整の“総合再生作業”

オーバーホール(Overhaul)とは、対象機器をいったんすべて分解し、清掃・点検・修正・再組立てを行う一連の整備作業です。

一般的な工程:

  1. 完全分解(各部品をすべて取り外す)

  2. 洗浄・清掃(油汚れ・金属粉・ホコリなどを除去)

  3. 消耗部品の交換(パッキン・ベアリング・潤滑油など)

  4. 調整・再組立て(動作・精度・トルクなどの最適化)

  5. 最終点検・試運転(実機に近い環境で性能確認)

見た目ではなく、内部の“状態”を新品に近づけるのが目的です。


2. 修理との違い:部分対応 vs. 総点検

「修理」とは、壊れた部品や不具合箇所をピンポイントで直すことが主な目的ですが、
「オーバーホール」は、“今は壊れていない部分”も含めて、全体を見直す作業です。

修理の目的:

  • 壊れた部分を復旧する

  • 短時間でコストを抑える

オーバーホールの目的:

  • 内部摩耗や汚れの蓄積をリセット

  • 将来の故障を未然に防ぐ

  • 製品寿命を大幅に延ばす

「今、問題がないからこそ必要なメンテナンス」――それがオーバーホールです。


3. どんな機器に必要?:精密性・耐久性が求められる分野で活躍

オーバーホールは、“内部精度が性能に直結する”機器や、“長期間使用が前提”の製品に特に重要です。

主な対象分野:

  • 腕時計(機械式・高級時計など)

  • 自動車・バイク(エンジン・ミッションなど)

  • 医療機器・測定機器(精度管理が必須)

  • ポンプ・モーター・ベアリング(産業インフラ)

  • クーラー・空調機器(長期稼働機器)

“分解しないと分からない劣化”に先回りできるのが、最大のメリットです。


4. オーバーホール修理業の価値:信頼と技術の積み重ね

オーバーホールは単純な作業ではなく、対象機器に対する“深い理解”と“確かな手仕事”が必要です。

求められる技術:

  • 図面がなくても構造を読み取る判断力

  • 微細な摩耗や異音を見極める感覚

  • ネジ1本のトルクにも気を配る精密さ

そして何より、「この人に任せてよかった」と思ってもらえる誠実な対応力
**職人の信頼が、次の依頼につながる“生きた技術”**です。


5. オーバーホールは“モノへの愛情”を支える技術

多くの人が、ただ「直す」よりも、「長く大切に使いたい」という気持ちを持っています。

  • 時計:父から子へ受け継がれる記念品

  • 車両:20年以上乗り続ける相棒

  • 機械:創業時から稼働し続ける1台

オーバーホールは、そうした“思い出と機能”を未来へつなぐための技術です。


オーバーホールとは、“機械の命を延ばす再生術”

オーバーホールとは、単なる修理ではありません。
それは、時間とともに生まれる劣化に向き合い、機械を“新品に近い状態”へ蘇らせる技術です。

見えない部分にこそ手をかけ、精密に、正確に、丁寧に。
それができる職人の技術と信頼が、オーバーホール修理業の価値を支えているのです。

ブログ更新をはじめました。

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今後ともよろしくお願いいたします。